「瀬田3000系電車」の版間の差分

 
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==概要==
==概要==
[[瀬田電気鉄道瀬田本線|瀬田本線]]の線形改良及び一部高架化により高速運転が可能になったことから、その試験車両として2008年11月に試作編成1本が瀬田車両にて製造された。従来の台車を流用せず、完全新規の台車を採用するなど、野心的な設計のもと製造されている。
[[瀬田電気鉄道瀬田本線|瀬田本線]]の線形改良及び一部高架化により高速運転が可能になったことから、その試験車両として2008年11月に試作編成1本が瀬田車両にて製造された。従来の台車を流用せず、完全新規の台車を採用するなど、野心的な設計のもと製造されている。
=== 車体 ===
基本的には2200系列と共通の部材を使用したステンレス製である。先頭車前面は繊維強化プラスチック (FRP) 製で、運転室から見て右側にオフセット配置された非常用貫通扉を有する。形状は2000系列と異なる特徴的なくさび形とされた。前照灯と尾灯は1500系や2200系に似た、窓下に横長のものが配置されている。


来たるべき新型通勤型車両(2200系および3500系)の高速運用を見据え、設計上の最高速度は130km/hに設定された。しかしこの試作編成は実際の通常運用を行いながら試運転をするという異例の試験方法を行ったため、乗客の安全のために瀬田電鉄線内での最高速度は120km/hまで制限されている。
車体配色は2000系列までの車両とは異なり、前面と側面窓上から屋根にかけて赤を配しており、色調も紅色(カーマイン)やマルーンに近いものとなっている。側面にはなぜか橙色が配されている。床面高さはレール面から1,130mmであり、レール面から1,100mmのプラットホームとの段差を低減している。
 
冷房装置は能力61.05kW (52,500kcal/h) の集中式を屋根上に1基搭載する。装置内の電熱ヒーターおよびヒートポンプ式冷凍サイクルを活用した冬期の暖房や除湿も可能としている。
 
前面と側面の種別・行先表示器はフルカラーLED式である。本系列では瀬田電鉄の採用車両としては初めて行先表示器もフルカラー式となった。ドア用車側灯のカバーの色は従来の車両の赤から無色透明となり、太陽光の散乱などによる誤認を防いでいる。


実際のところ、瀬田本線以外は瀬田電鉄線内に限ってもカーブなど直線が続かない区間が多々あり、実際の試験運用では当初の予定の半分以下の結果しか出すことができなかった。これは線形の原因の他に3000系の加速性能の不十分さが問題であったといわれている。
実際のところ、瀬田本線以外は瀬田電鉄線内に限ってもカーブなど直線が続かない区間が多々あり、実際の試験運用では当初の予定の半分以下の結果しか出すことができなかった。これは線形の原因の他に3000系の加速性能の不十分さが問題であったといわれている。


3000系の加速性能では、持ち前の最高速度の高さを生かす前に停車駅の為の減速をかけなければならないため、実質的に他の車両での運用とほぼ時間は変わらず、所要時間の短縮には至らなかった。そのため社内ではこれ以上の高速運用は不可能と判断され、3000系は次世代型通勤車両のテストベッドとされることとなった。<br>
3000系の加速性能では、持ち前の最高速度の高さを生かす前に停車駅の為の減速をかけなければならないため、実質的に他の車両での運用とほぼ時間は変わらず、所要時間の短縮には至らなかった。そのため社内ではこれ以上の高速運用は不可能と判断され、3000系は次世代型通勤車両のテストベッドとされることとなった。<br>
しかし製造元の瀬田車両では3000系試作編成の運用データを独自に解析し、それを基に加速性能の底上げを図った'''3050形'''を試作していた。この3050形は1編成が試作されたのち試運転を行わないまま[[水音車両]]に持ち込まれることとなり、試作剛体データおよび先頭形状、高速運転向け車両機器のデータ解析が行われたのち、後述の3100系が3000系の正式採用版として運用されることとなる。
しかし製造元の瀬田車両では3000系試作編成の運用データを独自に解析し、それを基に加速性能の底上げを図った'''3050形'''を試作していた。この3050形は1編成が試作されたのち試運転を行わないまま[[水音車両]]に持ち込まれることとなり、試作剛体データおよび先頭形状、高速運転向け車両機器のデータ解析が行われたのち、後述の3100系が3000系の正式採用版として運用されることとなる。尚、[[瀬田車両製造]]では、この3000系をベースとした量産向け通勤車両'''2700形'''を独自に開発し、府舘地方のいくつかの鉄道へと納入している。現在も2700形は生産が続けられているが、3100系などに転用されたデータなどは使用されておらず、あくまでも独自に開発されたものであるとされる。


次世代型通勤型車両のテストベッドとして試運転が再開され、更に3編成を新造して大量のデータを収集し、3500系や2200系の瀬田電鉄用機器調整には役立ったものの、その設備の複雑さから運転手からも不評を買い、運用区間は常に一定せず、一カ月ごとにほかの車両基地を転々と渡り歩くという異例の運用が続いていた。そんな中、2014年に新型車両2200系の2次車導入に伴い、機器統一がなされ運転方法も簡易な3100系に完全に入れ替えられることとなり、3000系3編成も先頭車を入れ替えて塗装変更・機器変更することで、3100系の仕様とほぼ同じ規格に統一される改修工事が行われ、3190番台として3100系列に組み込まれることとなった。これをもって3000系列は完全に消滅している。
次世代型通勤型車両のテストベッドとして試運転が再開され、更に3編成を新造して大量のデータを収集し、3500系や2200系の瀬田電鉄用機器調整には役立ったものの、その設備の複雑さから運転手からも不評を買い、運用区間は常に一定せず、一カ月ごとにほかの車両基地を転々と渡り歩くという異例の運用が続いていた。そんな中、2014年に新型車両2200系の2次車導入に伴い、機器統一がなされ運転方法も簡易な3100系に完全に入れ替えられることとなり、3000系3編成も先頭車を入れ替えて塗装変更・機器変更することで、3100系の仕様とほぼ同じ規格に統一される改修工事が行われ、3190番台として3100系列に組み込まれることとなった。これをもって3000系列は完全に消滅している。
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| 背景色  = #FF1919
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| 文字色  = #FFFFFF
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| 画像    = Seta3100center.png
| 画像    = Seta3100center2.png
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| 画像説明 = 3100系基本編成<br />(2010年6月10日 中ノ橋駅)
| 画像説明 = 3100系基本編成<br />(2014年4月9日 中ノ橋駅)
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| 運用者  = [[瀬田電鉄]]
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=== 概要 ===
3000系の剛体と運用データを基に水音車両にて製造された新製車であり、瀬田電鉄では2200系以来の新車導入である。ベースとなった3000系に基づいて拡幅車体は採用されず、編成の定員は減っているものの、拡幅車体では乗り入れられなかった地下線および直通先の西京メトロなどの乗り入れを想定した設計となっている。2200系の後期車同様に当初から臨海鉄道への乗り入れに対応するが、投入時期が重なったことと、独自に投入準備を進めていた特急専用車の導入が間に合わなかったこともあり、関南地区の4社直通開始に合わせ、一次車は全車両が瀬田本線系統へと投入された。<br>
試作編成は湾岸線カラー(紫と赤のグラデーション)が採用された配色であったが、量産更新車の導入前に瀬田電鉄では新塗装の統一色が採用されたため、量産更新車はすべて2200系および2600系と同様のカラーリングとなった。将来的な増結、上位種別への配当などを踏まえ、編成の組み合わせを変更することによって瀬田電鉄では初めてとなる8両固定編成にも対応する。また前述の通り、旧3000系もこの3100系同様の設備へと更新する改修が水音車両にて施された上で、試作編成として試運転されていたほか、正式導入時には量産車とともに瀬田本線へと配備されている。
一次車は6両固定編成が合計で4編成配備され、投入当初は箱重方面の急行として専用運用されていた。
=== 設備 ===
3000系のシート配置を受け継ぎ、ドア横のロングシート以外はクロスシートを採用するセミクロスシート方式を採用。主に倉急線、及びその先の砥田開発鉄道線、常総急行線での優等種別としての運行を考慮し、長時間に渡る着席でも乗客の疲労が極力たまりにくいように設計されている。また、3000系にも採用されなかった車内トイレを備える。<br>
運転台は2200系、および2600系と共通化することで運転士への負担を減らす設計となっているほか、3000系の高速運行のフィードバックから、路線によっては常用130 km/hの運行も可能である。