JMR東山361系電車

2024年12月1日 (日) 18:44時点における秋豆 (トーク | 投稿記録)による版

361系電車(361けいでんしゃ)は、東山旅客鉄道(JMR東山)および箱日本旅客鉄道(JMR箱日本)、西京旅客鉄道(NR)、桜川鉄道の特急形直流寝台電車である。

JMR東山361系電車
JMR箱日本361系電車
NR361系電車
桜川鉄道361系電車
SR中央線を走行する361系「ひさかた」
(今朝 瀬田みなみの駅 - 南瀬田駅間
基本情報
運用者 東山旅客鉄道
箱日本旅客鉄道
西京旅客鉄道
桜川鉄道
製造所 秋豆車輌製作所
製造年 2010年代
製造数 15編成105両
投入先 咲潟駅 - 西京駅桜川中央駅
主要諸元
編成 7両(2M5T)
軌間 1067 mm
電気方式 直流1500 V・架空電車線方式
最高運転速度 130 km/h
設計最高速度 140 km/h
起動加速度 1.8 km/h/s
減速度(常用) 4.3 km/h/s
減速度(非常) 5.2 km/h/s
編成定員 10(A寝) +94(B寝)+48(普通)=152名
全長 21,670 mm (21,300 mm)
全幅 2,945 mm
全高 4,090 mm
台車 軸梁式ボルスタレス台車、ヨーダンパ付
AS-46
主電動機 かご形三相誘導電動機
主電動機出力 220 kW
駆動方式 TD平行カルダン駆動方式
歯車比 17:96 (1:5.65)
編成出力 1,760 kW
制御方式 IGBT素子PWMコンバータ+VVVFインバータ制御
制動装置 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ、抑速ブレーキ
保安装置 ATS-P、ATS-SW、列車防護無線装置
テンプレートを表示

概要

寝台列車の「つくよみ」「オリオン」の車両置き換えおよび「ひさかた」への投入、スピードアップによる競争力確保を目的として設計・開発され、2010年代より東山方面 - 西京駅間を結ぶ「つくよみ」および東山方面 - 桜川中央駅間を結ぶ「ひさかた」として営業運転を開始した。

営業最高速度は130 km/hで、寝台列車としては285系と並び狭軌鉄道最速である。

導入の経緯

2000年頃以降583系で運転されていた「つくよみ」であるが、583系は登場より50年余りが経過し、老朽化・陳腐化が著しく、これを代替する目的で製造されたのが当系列である。

長距離旅行客が夜行列車から航空機・新幹線・高速バスへ移行したことを踏まえ、現代のニーズに合わせたサービスの提供によるビジネス・観光客の取り込みが図られている。

構造

車体

車体長は21,240 / 20,800 mm(先頭車 / 中間車)、全長は21,670 / 21,300 mm(先頭車 / 中間車)、車体幅は2,935 mm、21 m級車体である。一般的に鉄道車両の製造は、車体 → 艤装の順序で行われるが、個室寝台主体の本系列では仕切り壁が多く一般的な順序を採用した場合は工期および製造コストの増大が予想されたため、機器や配線などを予め車外でモジュール化しておき、個室を組み上げるパネル工法が採用された。。

個室寝台を主体としつつ一定の定員を確保するため2階建構造を基本とするが、3・5・10・12号車は主電動機、車両制御装置などの電装品を床下に搭載する電動車であることから、通常の平屋構造である。

行先表示機はフルカラーLED式のものが各車両の片側に1か所(1両に左右計2か所)設置されている。

車内

航空機や高速バスなどの競合交通機関と差別化を図り、魅力ある移動環境を提供するため「快適な乗り心地」と「個室化によるプライバシー」を重視した。本系列はそれを実現するために編成中の多くの車両を2階建車両とすることにより、頭上スペースを十分に確保した個室寝台を中心に構成した。設備を寝台・座席兼用として昼夜兼行の効率的な運用を狙った581系・583系に比し、本系列はあくまで寝台専用の設計であることが最大の特徴である。 客室は1 - 2人用の個室寝台を中心とした5タイプに分類され、個室については各扉に設けられた縦2列並びのテンキーにより、乗客自身が指定した暗証番号で施錠することができる。このほか、座席指定券で乗車できる「カプセル」「クシェット」も用意されている。

各個室共通のサービスとして、以下の設備類が全室に用意されている。

  • 個別空調・照明ダイヤル・時計(アラーム機能付)・コンセント・BGM放送装置・非常通報ボタン
  • コップ・ハンガー・スリッパ
  • 枕・シーツ・掛け布団・浴衣
ベッド幅(mm)
ロイヤル シングル

デラックス

シングル シングル

ツイン

デュエット カプセル クシェット
800 850 - 800 700 - 600 700 - 600 700 - 600 850 - 500 700

A寝台個室

ロイヤル

本列車の最高級室であり、4・11号車に2部屋ずつ設置された1名用個室。二階建て車体の空間的余裕を生かした重層方式(メゾネットタイプ)とし、1階部分はシングルベットの寝室、2階部分はソファと化粧室を設けたリビングを配する。2階のソファは寝台に転換でき、2名での利用することも可能である。個室内に専用のシャワーブース(シャワーの温水は延べ12分間使用可能。アメニティセット付)、折り畳みのトイレ及び洗面台、ドライヤー、クローゼットが完備されている。

シングルデラックス

4・11号車にそれぞれ6室(上階4室、下階2室)ある1名用A寝台個室である。

2階建でかつ通路を除く車体幅全てを使用するという空間的余裕を生かし、大型デスクや洗面台を備えており、レール方向に配置されたシングルベッドの幅(850 mm)も最大級である。客室内の床面積はA個室ロイヤルに匹敵する大きさであるが、ロイヤルに装備されていた個室内トイレ・シャワールームが無いこともあり、シングルデラックスの個室料金設定とされている。

シャワーは同じ車両内にシングルデラックス利用客専用のシャワールームがあり、無料で使用できる。車内改札の際に車掌から渡されるシャワーカードを挿入して使用する。なお、3・10号車にある全乗客共通のシャワールームも利用可能。ロイヤル同様、専用のアメニティセットが用意されている。

B寝台個室

シングル

1・2・5 - 7号車に合計54室、8・9・12 - 14号車にも同様に合計54室ある1名用B寝台個室。本列車で最も室数が多いスタンダードタイプの個室である。

従来の開放式A寝台とほぼ同じ占有面積と広い頭上空間を備えた個室であるが、寝台幅自体は従来のB寝台と同じ最大700mmである。

ベッドは窓と平行に設置されており、個室入口側を足元にして寝る。個室入口近くの壁には細長いテーブルがあるほか、縦長の鏡が設置され、姿見として利用できる。

2階建構造のため個室内は完全に直立できるだけの高さがあるが、テーブルの幅は概ね10 cm程度と細く、ほかには寝台横に細幅の台があるのみで荷物棚の類がない。なお、客室は上段・下段・平屋室があり、天井高や寝台横の台などの寸法が若干違っているが、ベッドの大きさは全て同じである。

シングルツイン

1・2・6・7号車の車端部に合計7室、8・9・13・14号車の車端部にも同様に合計7室ある1名用B寝台個室。2・9号車の1室は車椅子での利用にも対応した構造となっている。

シングルベッドが上下段に配置された2段ベッド構造となっている。1名用としても2名用としても使用可能なことから「シングルツイン」という名称が付けられている。また、下段ベッドの中央部が外せるようになっており、折り畳み式のテーブルを挟んだ2名分の座席としても使用できる。

デュエット

4・10号車に7室設置されている2人用個室。上段と下段の2タイプがあり、いずれも2つのシングルベッドが平行に配置されている。

指定席

カプセル

5・12号車に28席ずつ存在する開放型寝台に似た普通車座席指定席である。285系・28系客車に設置されている「ノビノビ座席」と同等の設備である。・

二段構造のカーペット敷きとなっており、頭が来る部分の左右に隣と仕切る壁に読書灯が設置されており、1名当たり1畳分程度のスペースで区分されている。通路との間にカーテンが設置されているが、隣と仕切るカーテンは設置されていない。横になった際に頭が来る部分の天井に空調の吹出口があり、風量は個別に変更できる。コンセント・照明ダイヤル、毛布と使い捨ての紙コップが備えられている。

クシェット

3・10号車に20席ずつ設けられている、開放式寝台に似た簡易個室の普通車座席指定席である。うち8席が女性専用である。

上下二段式のシングルベッドが2組向かい合い、4名で1ブロックとなっている。通路とそれぞれのベッドはカーテンで仕切られている。1ブースを4人で確保すれば個室にもなるが、1ブースを3人未満で使用する、または複数のグループで利用する場合は開錠したままとなる。コンセント・照明ダイヤル、毛布と使い捨ての紙コップが備えられている。

共用設備・その他設備

シャワー室

3・4・10・11号車に1か所ずつあり、脱衣室とシャワー室・機械室で構成されている。脱衣室内の操作盤に車内で購入したシャワーカードを挿入することで利用できる。

シャワーの設備自体はいずれも共通で、1回の利用で最大6分間(一時停止可能)出湯が可能。脱衣室にはドライヤーが設置されているほか、次の利用客への配慮として利用後に操作盤の「シャワールーム洗浄ボタン」を押すことでシャワー使用後室内に残った水分を高圧空気で除去する装置も設けられている。なお、共用シャワー室にタオル・石鹸・シャンプー等のアメニティ類は設置されていないので、持参する必要がある。

洗面所・トイレ

各号車に共用の洗面所とトイレが設置されている。

ミニロビー「ムーンライト」

3・10号車に1か所ずつあり、座席が4席とL字型のソファー、自販機コーナーが設置されている。

飲料自動販売機

3・5・10・12号車に1台ずつ設置されているほか、ミニロビーにはミル挽き珈琲の自動販売機が設置されている。

シャワーカード自動販売機

3・10号車に1台ずつ設置されている。

主要機器

スピードアップを図るため電車方式を採用した。MT比は2M5Tの7両編成を組み、電動車である3号・5号車を除く5両が2階建ての付随車(T、Tc)である。1M2Tを基本単位とする方式を採用しつつ、付随車が1両加わっている。編成単位の定員も152人と少なく、走行性能面で乗客の多寡による荷重変動をほぼ考慮せずに済んだ結果、増結余力が得られたため。このため編成内の電動車比が極めて低い組成でありながら、急勾配路線である北陽本線・桜川鉄道線での運用を可能としている。

主電動機は1時間定格出力220 kWのかご形三相誘導電動機が採用されている。制御方式は、PWMコンバータ装置とVVVFインバータ装置を1つにまとめた主変換装置を搭載しており、日立製作所製の低損失IGBT素子を用いたVVVFインバータ制御により、VVVFインバータ装置1基で4基の電動機を制御する1C4M構成となっている。

補助電源装置は三相交流440V、260kVAの容量を有する三菱電機製IGBT素子使用の静止形インバータ(SIV)を有する。なお、サービス用の電源に関しては使用量が多いことから、車両制御装置とは別に定格容量130 kVAの補助電源装置WSC35も編成中に2台搭載している。給電区画は、車両制御装置が1 - 3・5 - 7号車の三相電源、補助電源装置が編成全体の低圧電源と4号車の三相電源となっている。補助電源部の故障に備え、車両制御装置に関しては主回路用インバータをCVCF制御することで対応する。補助電源装置に関しては通常1台のみを使用し、故障が発生した場合にもう一方の系統がバックアップとして機能するようになっている。

台車は軸梁式ボルスタレス台車を採用する。耐寒耐雪性能を向上させ、ヨーダンパを装着する。

集電装置は、シングルアーム式パンタグラフ をモハ361形とモハネ361形にそれぞれ2基搭載されており、うち1基は予備としている。回生失効時に備えた発電ブレーキ用の抵抗器およびブレーキチョッパ装置も搭載され、架線電圧が1,700 V以下では回生ブレーキのみの動作となるが、1,700 V以上では発電ブレーキと回生ブレーキの併用、1,775 V以上では発電ブレーキ単独で作用するようになっている。

フルアクティブサスペンションを搭載し、車体間ダンパを全車に装備することで乗り心地の改善を図った。

形式

  • クハネ361形 (TNWC, TNWC')
1・7・8・14号車に位置する貫通型制御付随車。「シングル」19室、「シングルツイン」1室、運転台などを備えている。車両番号奇数は東山向き、偶数は関山向きで運用されている。
  • サハネ361形
    • 0番台 (TNW)
    6・13号車に位置する中間付随車。「シングル」20室、「シングルツイン」3室などを備えている。
    • 100番台 (TNW2)
    2・9号車に位置する中間付随車。「シングル」14室、「シングルツイン」1室、「デュエット」4室などを備えている。
  • サロネ361形 (TNWS)
4・11号車に位置する中間付随車。「ロイヤル」4室、「シングルデラックス」6室のほか、シャワー室などを備えている。
  • モハ361形(MN)
3・10号車に位置する中間電動車。「クシェット」20席のほか、シャワー室・ミニロビー「ムーンライト」・自動販売機・業務用室・集電装置・補助電源装置・空気圧縮機などを備えている。
  • モハネ361形(MN2)
5・12号車に位置する中間電動車。「カプセル」28席、「シングル」2室のほか、自動販売機・車掌室・集電装置・補助電源装置・空気圧縮機などを備えている。
編成表
西京桜川中央 神谷咲潟
号車 1・8 2・9 3・10 4・11 5・12 6・13 7・14 備考
形式 クハネ361 サハネ361  < >

モハ361

サロネ361  < >

モハネ361

サハネ361 クハネ361
設備 シングル

シングルツイン

シングル

シングルツイン デュエット

クシェット ロイヤル

シングルデラックス

カプセル シングル

シングルツイン

シングル

シングルツイン

定員 21 24 20 10 28 26 21